ドナルド・トランプ氏当選について

2016年大統領選挙をアメリカに滞在しながら迎えることができたのは幸運でした。

今回の選挙戦を通して、今まで見えていなかったアメリカの影の部分がはっきりと確認できたからです。

私が滞在しているカリフォルニアや、西海岸の主な州は、リベラルな地域であるため、大きな差をつけてヒラリー氏が勝利。

同じくリベラルな地域である東海岸の幾つかの州もヒラリー氏が勝利しました。

国民投票の結果では僅差ではありましたが、ヒラリークリントン氏がトランプ氏の獲得数を超えていたものの、『エレクトラルカレッジ』という1800年代にできたシステムにより、それぞれの州から選ばれた代表の投票数においてトランプ氏が上回り、270を獲得したため、トランプ氏の勝利となりました。

このエレクトラルカレッジというシステム、ブッシュ氏が当選した時も、国民投票では対立候補が上回っていたものの、ブッシュ氏のエレクトラルカレッジでの獲得数が上回ったため、ブッシュ氏が大統領となった過去があります。

国民投票の結果がそのまま反映されないという点において、納得できない国民も多数いると思われますが、このシステムを改憲するには、全議員の3分の2の獲得が必要となり、共和党政権が過去に数回このエレクトラルカレッジにより大統領を選出していることから総出で反対に回るため、改憲には至らないのが実情のようです。

今回の選挙結果には、かなりのアメリカ人が驚き、衝撃を隠しきれなかったようです。
知り合いの白人男性も、結果を知り吐き気がするほどの衝撃だと言っていました。

それもそのはず、共和党の支配が強いFOXテレビ以外のメディアはこぞってトランプ氏を批判していましたし、アニメからコメディアンに至るまで、誰もかれもがトランプ氏の選挙戦自体をギャグのように扱っていました。

大統領候補の直接対決討論では、ヒラリー氏が理路整然と彼女の政策を話したり、トランプ氏の個人攻撃をうまくかわし、数十年における彼女のキャリアを存分に垣間見れるものでありましたが、トランプ氏はまるで小学生のように感情的に罵倒を繰り返したり、具体的な政策も言わないまま耳障りの良い言葉を並べるだけという状況で、まるで大統領になる資質など無いようなレベルの低い論戦を見て、多くの国民はうんざりとしたはずです。

ところが蓋を開けてみると、トランプ氏が勝利という、まるで予想だにしない結果となってしまいました。

リベラルな都会である西海外や東海岸の一部の州を除き、アメリカ中部の州はまだまだ人種差別が根強く、日本人である私が知らないアメリカの姿が今回の選挙戦で露呈しました。

カリフォルニアは、トランプ当選がどうしても納得いかず、州自体をアメリカから独立させようという動きが議会で真剣に議論されるほどです。独立すれば世界でも6位のGDPを誇る国となるため、不可能でもない、というところでしょうが、現実的には難しいでしょう。

私はニューヨークやカリフォルニアなど、人種が多様な州での生活をしているため、中部の現実を知らないまま過ごしていたようです。
アメリカの中部は、有色人種が未だに差別を受ける、海外に行ったことがないような田舎人が多く生活しており、メディアを通して見るアメリカの姿とはまた違った姿があります。

よく、無教養なアメリカ白人のことをレッドネックと差別的に表現しますが、今回の選挙戦ではまさにこれらの白人低所得者、無教養な田舎者が、普段の鬱憤を人種差別をはけ口としてヒスパニックや黒人を代表とする白人以外の人種をほこ先として感情的にトランプ氏に先導された結果と成りました。

また、18歳から35歳までの若者がもっと投票していれば、ヒラリー氏が圧勝していたと言われていることから、高年齢層の差別に対して罪悪感を感じにくい世代にもトランプ氏が受けていたのかもしれません。

いずれにしても、今回の選挙結果は世界の安全保障において大きな危機となりえますし、またアメリカ国内の隠れていた闇を表に出し、人種間の溝をさらに深めてしまったという点において、トランプ氏は非常に罪深い事を行っていると私は感じました。

また、このような人物を当選させてしまったアメリカという国が如何に問題の多い国で、人種差別的であるかということがわかり、失望を隠しきれません。


現在トランプ氏は、メキシコと中国に主に焦点をあてているようですが、大統領選挙中の発言の中でも、度々日本についてネガティブな発言をしています。

今後100日間に行う中心的な政策の中で、中国からの輸入を30%程度カットするというものがありましたが、中国の次は日本が標的になる可能性も全く0ではないのです。

また、今後日本人がアメリカに留学、旅行したり、働こうとする場合にも、ビザが取りにくくなったり、アメリカ中部での有色人種に対する差別に運悪くさらされる可能性も高く成りました。


ヨーロッパからの入植者がネイティブアメリカンから土地を奪い、また第2次大戦中には日本人から資産を奪い、近年の移民に対しては白人がやりたがらないような3Kの仕事をやらせておきながら、平気で人種差別的な発言を繰り返す彼らには、開いた口が塞がらないという心境です。

多くのアメリカ人も、今回の結果には憤りを感じているようで、カナダの移民局のホームページがあまりのアクセス数の多さにより、一時的にサーバーがダウンするという事態にもなりました。

皆が今回の結果を受けて、アメリカという国に失望し、カナダに移住を真剣に考えるという状態になったようです。

とにかく、今後のトランプ氏の行動次第では、第3次世界大戦、もしくは世界恐慌が起きてもおかしくない状況です。

よく注意深く世界情勢を観察して、日本はアメリカにあまりに巻き込まれないように、少し距離をとった方が良いような気がします。

日本政府が、しっかりと状況を理解し、賢い選択を行うことを望みます。
また、アメリカという国の闇がさらされた今回の選挙結果を受け、日本がいつまでもアメリカのポチでいる事が本当に日本を守ることにつながるのか?しっかりと考える時期が来たようです。